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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)
2018年6月17日  年間第11主日 B年 (緑)
わたしたちは皆、キリストの裁きの座の前に立ち、……行ったことに応じて、報いを受けねばならない(二コリント5・10より)

裁き主キリストに人類の救いを願うマリアと洗礼者ヨハネ  
モザイク「最後の審判」図の部分
イタリア トルチェッロ大聖堂 12世紀

 ヴェネツィアの潟にあるトルチェッロ島にある司教座サンタ・マリア・アスンタ大聖堂のビザンティン式のモザイク。ヴェネツィアのサン・マルコ大聖堂のモザイクにも通じる雰囲気が感じられるだろう。
 福音朗読箇所は、神の国の成長する力、神自身が主導する力の偉大さを印象づけるたとえであり、第1朗読のエゼキエル書17章22-24 節も、またそのような「高い木を低くし、低い木を高く」(17・24)する神の力の偉大さを告げる。このような神の力、いわば神の国の生命力を念頭におきつつ、第2朗読の使徒書の朗読箇所(二コリント5・6−10)にある「キリストの裁きの座の前に立ち」(5・10)という句に注目して表紙絵が選ばれている。最後の審判も、神の国の完成に至る出来事であり、裁きという以上に偉大な神の救いのわざにほかならないからである。
 「最後の審判」という題のこのモザイクには三つの主題が統合されている。一つはもちろん最後の審判で、玉座に座すキリストを中心とした群像図である。その中のキリストの描写は、第二の主題としての「荘厳のキリスト」に基づく。栄光に包まれていることを示すマンドルラ(光背)が特徴である。もう一つのテーマはいわゆる「デイシス」(ビザンティン美術を起源とする図像の一つの型)、すなわち(主に向かって)左のマリア、右の洗礼者ヨハネが人類の救いをキリストに願う図で、イコンにおいてしばしば描かれるテーマである。
 裁き主として来臨しているキリストは、上に位置しているわけでもなく他の人物よりも大きいわけでもない。主の尊厳や偉大さが位置や大きさを通してではなく、光背の濃淡、すなわち奥行きで表現されているようである。いわば中空に主の存在する異次元空間が現出しているようなのである。光の奥行きを表現するモザイクの技巧には目を見張らされる。
 キリストの手と足にはしっかりと傷が描かれている。その足元には二体の不思議なものが描かれている。これは、エゼキエル書の1章に登場する四つの生き物がモチーフになっている。その四つの生き物は、「それぞれが四つの顔を持ち、四つの翼を持っていた」(エゼキエル1・6)とあり、四つとは人間の顔、獅子の顔、牛の顔、鷲の顔であった(同10節参照)。のちに四福音記者のシンボルとなる四つの顔である。このモザイクでは、この不思議な生き物は二体となっているが、それぞれ真ん中に人、(向かって左側のものは)右に獅子、左に牛(角でわかる)、右側のものは右に獅子、左に牛、それぞれの上に鷲の顔が描かれている。その間に車輪が描かれているが、これもエゼキエル書1章の続き(15節〜21節)の内容を下敷きにしている。
キリストを包む光背の真下に赤い尾のようなものも見えるが、これも玉座の形をしたものから広がる火(26−28節参照)を表現しているものと思われる。いずれにしても「主の栄光の姿の有様」(28節)を描く、このエゼキエル1章を土台とした構図であることが感じられる。きょうの第1朗読がエゼキエルということもあり、この1章も併せて読んでみてはと思う。
 栄光の主の来臨、裁き主としての存在に対しては、マリアと洗礼者ヨハネがすべての人の救いを願う取り成し役として伴われている。洗礼者ヨハネは旧約の預言の系統の最後の存在、マリアは、新しい人類の母、教会の母である。そのわきには使徒らしき人(部分)、天使、たくさんの白い衣の人々(救いの恵みにあずかろうとしている人々が囲む)。まさしく救い主を賛美しつつ迎える図となっている。
 この光景は、ある意味で、ミサの中にも秘められている。エゼキエルに基づく不思議な生き物は、黙示録5章に登場する玉座を囲む四つの生き物の予型でもあり、預言書の伝統をさかのぼればイザヤ6章に登場するセラフィムの系譜にもある。そのセラフィムは、「聖なる、聖なる、聖なる万軍の主。主の栄光は、地をすべて覆う」(イザヤ6・3)と主を賛美する存在であった。このことばを取り入れながら教会はいつもミサの中で、主の訪れを「聖なるかな」の叫びをもって迎えている。我々も実は玉座のキリストを囲む群れの一員なのであろう。「国と力と栄光は限りなくあなたのもの」と主をたたえて、聖体の糧を受け、新たに派遣されていく。そのような生活の彼方に玉座のキリストを囲む神の国の宴にあずかることを信じ、待ち望みながらミサをささげているのである。

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