研究活動
オリエンス・セミナー
宗教とヒューマニズム―人間・生命・文化の活性化のために
「わたしが来たのは、羊がいのちを受けるため、しかも豊かに受けるためである」(ヨハネ10・10)
(1)世界規模の人災
2011年3月11日の大震災の傷跡は深く、いまだに多くの人々は苦境に置かれている。それと同時に、この震災に伴う、福島第一原発の事故は、私たちに改めて現代の高度資本主義経済の仕組み・論理がいかに人間の生にとって危険をはらんだものであるかを白日の下にした。しかし、震災以前からすでに、バブル経済の破綻、先進諸国での金融危機の問題、さらに異常気象下での世界規模の災害の頻発など、すべては、単なる天災ではなく、人間の業によるもの(人災)であることが明らかとなりつつある。
(2)人間の危機
こうした人間の生命の危機、人間的文化の危機に際して、宗教の役割や使命もまた根底から問われている。2世紀後半の古代教父エイレナイオス(Eirenaios)は、「生きている人間こそが神の栄光である」(Gloria
Dei vivens homo)と喝破している(『異端反駁』IV,20,7)が、この「生きている人間」の多くが今、生命・文化の根こそぎの状態にさらされ、「この世の中で希望を持たず、神を知らずに生きて」(エフェソ2・12)いる。
(3)「いのちの福音」の真理を
宗教は本来こうした人間に救いをもたらすはずのものである。キリスト教は、故ヨハネ・パウロ二世教皇が言われたように、「死の文化」に対する「いのちの文化」をその福音の中核にするものであって、今こそ、この「いのちの福音」を発信する時である(ヨハネ・パウロ二世『いのちの福音』1995年)。しかし、そのためには、いのちの福音の真理をこの世界の現実に即して新たに学びなおし、諸宗教、諸学問との交流・対話を推進する必要がある。「神はすべての人が救われて真理を知ることを望まれる」(Iテモテ2・4)のであり、また、「真の幸福は真理による喜び」(Vita beata est gaudium de veritate)にほかならないからである(アウグスティヌス)。
(4)宗教的ヒューマニズムの再考
オリエンス宗教所は、創立以来、日本社会における福音宣教のために、研究・出版・教育につとめてきたが、本セミナーでは、今日的な問題意識を共有しつつ、開かれた研究・対話の場として、研究所の使命を実現していきたいと思う。今年は上述したような背景から、とりわけ、人間・生命・文化のありようを宗教はどのように理解し、実践するか、について学びたい。エイレナイオスの言葉に即して言えば、神の栄光となる生きた人間についての研究であり、宗教的な観点からのヒューマニズム再考をめざしたい。
=次回開催予定=
第60回
題名:東日本大震災を私はこう受けとめる
講師:佐藤純一(国際メタテクノロジー研究所所長、WCRP平和研究所所員、元東京大学客員教授、工学博士)
日時:2012年2月16日(木) 18:30より
場所:オリエンス宗教研究所図書室
第61回
題名:未定
講師:島薗進(東京大学教授)
日時:2012年3月23日(金) 18:30より
場所:オリエンス宗教研究所図書室
※ ご出席をご希望の方は、当研究所までご連絡ください。
※「オリエンス・セミナー」の発表・研究をまとめた書籍。
『キリスト教をめぐる近代日本の諸相――響鳴と反撥』
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