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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)
2017年7月23日  年間第一六主日 A年 (緑)
〔“霊”は〕弱いわたしたちを助けてくださいます  (ローマ8・26より)


使徒パウロ  モザイク イタリア パレルモ パラティナ礼拝堂


 きょうの福音朗読箇所は、マタイ13章24−43節(=長い場合)、先週の種まきの譬えの次に来る譬え話集ともいえる後半である。いわゆる毒麦のたとえをはじめ、小さな譬え話が続く。毒麦については、それを抜き集めるのではなく、良い種も毒麦も、「刈り入れまで、両方とも育つままにしておきなさい」 (マタイ13・30)という主人のことばがいわば、神のみ心を表すものとしてこの話の肝になっているようである。長い朗読の場合に読まれる36節〜43節は、いわば、毒麦のたとえ話の後世の解釈の一例が反映したものといわれる。ただ、「刈り入れ」が、世の終わりのときの裁きを暗示していることはたしかで、それに向けての生き方に触れる譬えであることは明らかである。後半の解釈では、裁きの様子のことに説明の重点が置かれているが、上述の「両方とも育つままにしておきなさい」は、本人たちの自主的な回心をこそ、神は待っているということを印象深く伝えているようである。
 この点を読み間違えないようにするため、きょうの第1朗読では、知恵の書の12章13節、および16-19 節が読まれている。19節では、「神に従う人は人間への愛を持つべきことを、……御民に教えられた。こうして御民に希望を抱かせ、罪からの回心をお与えになった」とあり、神が人々に主体的な、自発的な回心こそを求めていると伝え、回心も神からの恵みであることを暗示する。その根底をなすこととして、神が正義の源であり(12・16参照)、寛容な方(12・18)、大いなる慈悲をもつ方(12・19)として告白されている。イエスが教える父なる神の姿そのものであろう。
 さて、表紙はパウロの絵なのに、福音と旧約の関係を長々と確認したのには訳がある。それは、ミサの朗読の中での使徒書の役割を考えるためである。中心となる福音朗読と第1朗読(旧約朗読。ただし復活節を除く)の間に使徒書の朗読がある。年間主日の場合、福音書からの朗読は、記載順に朗読箇所が選ばれていき、第1朗読は、その福音朗読のテーマに沿って選ばれていく。したがって、前の週と次の週の旧約の朗読箇所は関係がなく、全く別な文書が読まれることになる。あくまで、福音が中心、それとの関係で旧約がある。
 とすると使徒書はどうか。使徒書の場合は、特に福音と旧約が巡るところの中心テーマとは直接に結びついてはいない。一定の数週間、一つの書、たとえばきょうならローマ書で、年間A年では、原則として年間第9主日から(年によって数主日は割愛される。今年は年間第12主日から)第20主日までローマ書からの朗読である。使徒書の朗読はその数週間の間に、記載順に沿って抜粋朗読される(準継続朗読という)。したがって、福音と旧約のもつ主題的なつながりは、直接には使徒書には出てこない。
 しかし、だからといって、全く関連がなくなってしまうわけではない。きょうの使徒書の中には、「わたしたちはどう祈るべきかを知りませんが、”霊”自らが、言葉に表せないうめきをもって執り成してくださるからです」(ローマ8・26)というように、信仰をもって生きる人間の心を聖霊が導いてくれていることをまざまざと語っているのである。これこそ、神から自由を与えられて、主体的な回心を恵みとして受けている人間の心の現実を映し出しているのではないだろうか。主題的に特につながっていなくても、キリストのことをいつもあかしし、信仰者としての生き方や心をいつも考えている使徒のことばは、かならずどこか福音と旧約の関係で示されるその日のメッセージにつながってくるはずである。
 そして、そのような信仰者の心をまざまざとパウロが語れるのは、自分自身の内面を見ているからである。人間パウロの姿もここにはっきり浮かび上がってくる。そんなパウロの姿を、このモザイクは、しっかりとした輪郭をもって、力強く描き出している。自ら弱さを抱えつつも、キリストの福音に依って立つことにより力強い宣教者となったパウロの面影を、このモザイクから深く思いめぐらすことができよう。広い額は知恵の恵みを受けたパウロのいつも描き方である。その目は上を見ている。右手の指も上を指し示している。それはキリストの方向であり、父なる神の方向であろう。左手で押さえているのは自分の心ではないだろうか。その内側を、彼の文章は、我々に分かち合わせてくれている。

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