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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)
2017年7月30日  年間第一七主日 A年 (緑)
あなたは……訴えを正しく聞き分ける知恵を求めた (列王記上3・11より)

ソロモン  シトー会修道院の聖書写本 フランス ディジョン市立図書館 (12世紀)

 きょうの福音朗読箇所は、マタイ13章44−52節=長い場合、または44〜46節=短い場合である。種蒔きのたとえから始まる譬え話集の最後にあたる。短い朗読の場合でも、「宝が隠されている畑」「高価な真珠」という話の題材、そのモチーフは鮮やかであろう。それを見つけた人はどちらも「持ち物をすっかり売り払ってそれを得る」という行動が、神の国の臨む者の例とされている。
 この福音の主題から、第1朗読の配分の理由も見えてくる。ソロモンに対する「あなたは自分のために……知恵を求めた」という列王記上3章11節を含む箇所が朗読されるのである(列王記上3・5、7−12)。福音朗読の主題句との関連で言えば、神から与えられる尊い恵みを得るために、万事を尽くす、あるいは他の何よりも価値を置いて求めるという態度が称揚されているといえるかもしれない。
 答唱詩編(詩編 119)もそのあたりを見事に結びつけて「神よ、あなたはわたしのすべて」という告白(詩編119 ・57 典礼訳)に凝縮させている。
 ソロモン王が主日の朗読に登場する数少ない例なので、この主日には、なるべくソロモンを描くさまざまな絵を紹介することにしている。家臣たちを従える、見るからに尊厳ある玉座の王を描く写本画である。この絵とともに味わうべきなのは、おそらく「知恵」であろう。
 ソロモンに関するエピソードに出てくる「知恵」は聖書全体を通して重要である。ソロモンが知恵に満ちた賢王であったことは、列王記がよく伝えるところであるが、きょうの朗読箇所の中では、特に、神に信頼し、すべてを神から求め、「自分のために」といっても、個人としての長寿・富・敵への勝利を願うのではなく、神に仕える王としての使命を果たすために、神から知恵を求めたというところで信仰者の模範的なイメージが与えられている。きょうマタイの福音朗読箇所はその意味では、この列王記のソロモンのエピソードを経由して、マタイ福音書6章25−34節と関連してくる。「自分の命のことで何を飲もうかと、また自分の体のことで何を着ようかと思い悩むな、……何よりもまず神の国と神の義を求めなさい」の箇所である。根本は「神の国を求めよ」にある。
 ところで、ソロモンに授けられた知恵と賢明に類するものは、イザヤ11章2節では来るべきメシアについて約束される霊を思い起こさせる。「その上に主の霊がとどまる。知恵と識別の霊、思慮と勇気の霊、主を知り、畏れ敬う霊」。ここから、霊に満たされたキリストについても知恵の充満を考えることができる。たしかにルカ福音書で、イエスも幼子のときから「知恵に満ち、神の恵みに包まれ」ていた(ルカ2・40)、少年期には「知恵が増し、背丈も伸び、神と人とに愛された」(同2・52)。このイエスにおける知恵の思想は、十字架につけられたキリストこそ神の知恵というパウロの教え(一コリント1・18−31)に至る。
 いうまでもなく、キリストに結ばれる我々が堅信の秘跡で受ける聖霊のたまものは、まさにイザヤの預言で約束された霊を受け継ぐものである(「今、この人々の上に助け主である聖霊を送り、知恵と理解、判断と勇気、神を知る恵み、神を愛し、敬う心をお与えください」という堅信式の祈り参照)。それは、キリストに満ちていた知恵、またキリストの十字架によって完全に示された神の知恵を悟ることのできる霊であり、その知恵をもとに、日々の生活や働きの中でのキリスト者の精神活動を支えていくものとなる。その意味では、知恵に満ちた賢明な心のソロモン王は、キリストの予型であると同時に、我々の予型でもあるのだということに気づかされる。さらにもう一つ加えるなら、きょうの箇所で、ソロモンは、主の「何でも願うがよい」の呼びかけに答えて、「わが神、主よ、あなたは父ダビデに代わる王として、この僕(しもべ)をお立てになりました。しかし、わたしは取るに足らない若者で、どのようにふるまうべきかを知りません」(列王記上3・7)と言う。このような対応は、天使のお告げを受けたマリアの応答によく似ている(ルカ1・26−38)。神のことばを真摯に受けとめ、その意味するところに絶えず思いを巡らし、見極め、こたえていくという意味では、案外、ソロモン王の姿は、マリアの予型、その意味でも、信仰者すべて、そして教会そのものの予型であると言えるかもしれない。


工事中

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