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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)
2017年8月6日  主の変容 (白)
イエスの顔は太陽のように輝いた (福音朗読主題句 マタイ17・2)

主の変容 挿絵 ケルンで作られた朗読福音書     1250年頃

 8月6日に祝われる主の変容の祝日、今年は日曜日に重なり、優先される主の祝日となっている。
 現在ではこの日の福音は、ABC各年の主要福音書に従って読まれることとなっており、今年はA年なので、マタイ福音書の変容の箇所17章1-9節が朗読される。
 8月6日に主の変容を祝うという慣行は、シリアの典礼から5世紀末に始まったらしい。変容の山と言い伝えのあったタボル山に関係する祭か、そこでの教会の献堂式が祝日の起源だといわれる。いずれにせよ、それが900年頃ビザンティン典礼に広まり、10〜11世紀ごろから西方でも広まり、定着していった。
 変容の出来事は、どの福音書でも、ペトロの信仰告白(マタイ16・13-20/マルコ8・27-30/ルカ9・18-21)、イエスによる最初の死と復活の予告(マタイ16・21-28/マルコ8・31-9・1/ルカ9・22-27)、そして変容の出来事(マタイ17・1-9/マルコ9・2−9/ルカ9・28−36)という同じような順序で物語られる。死と復活という出来事を姿が変わるということで示した予告的顕現といえる出来事である。三つの福音書の共通部分のほかに、マタイ福音書でのさらに独特な「味つけ」を帯びている点もあるので、三つを比較する意義がある。
 マタイの特徴は、変容の際の顔の変化を描写するところにある。マルコでは、「イエスの姿が彼らの目の前で変わり、服は真っ白に輝き」(マルコ9・2-3)、ルカでは、「イエスの顔の様子が変わり、服は真っ白に輝いた」(9・29)とあるのに対して、マタイでは、「イエスの姿が彼らの目の前で変わり、顔は太陽のように輝き、服は光のように白くなった」(17・2)とある。マタイの語り方が姿、顔、服と三つに関して十分に描写していることがわかる。また「顔が太陽のように輝き」という表現は、このマタイ13章43節に出てくる表現と似ている。そこでは、毒麦のたとえの説明のところである(今年は7月23日の年間第16主日の福音朗読に含まれる箇所)。世の終わりのときの裁きで、不法を行う者どもが燃え盛る炉の中に投げ込まれ、そこで泣きわめいて歯ぎしりをするとき、「正しい人々はその父の国で太陽のように輝く」(マタイ13・43)とある。つまり、イエスの顔が太陽のように輝くというところには、正しい人(義人、神に従う人)が最後に受ける決定的なあり様を示す表現と思われる。神に従う人がその従順を全うしたとき最後に受ける状態がここで先んじて示されたという意味合いが込められているのかもしれない。
 さて、この朗読福音書の挿絵を見ると、上の中央にイエス、両側にモーセとエリヤ、下に三人の弟子たちが描かれている点は通例に従っている。ただ、特徴の一つは、イエスが特に白い衣で描かれている訳ではないことである。主権者の尊厳を示す赤紫の衣がむしろ強調されている。山の上に主として立っている姿が鮮やかである。両脇のモーセとエリヤ、二人を区別する要素に乏しく(それぞれの頭の上に名を表す文字が書かれているようでもあるが判別できない)、どちらも似ている。主の仕える従者という趣がより強くなっているように感じられる。山の下にいる三人の弟子たちは、一様にイエスを見上げている。(向かって)右側の白髪、白髭の男がペトロであろう。彼らが一様にイエスを見上げているという描き方は、ある意味でこの絵の個性でもある。目を覆って卒倒しているところを描くものもあるからである。
 この場合、彼らが見たことに対して、イエスは「人の子が死者の中から復活するまで、今見たことをだれにも話してはならない」(マタイ17・9)と告げる。ここでの弟子たちの眼差しは、真実には復活したイエスの現れを体験したときに、はじめて生きることになる。それは、変容の出来事のとき、彼らが聞いた「これはわたしの愛する子、わたしの心に適う者、これに聞け」(同17・5)という声に、このときはひれ伏し、恐れるが、復活後、この「聞く」(=聞き従う、信じて生きていく)ことを、弟子たちは実行していく。変容のとき、天からの声を聞いたという意味合いが、イエスから弟子たちやモーセ・エリヤに伸びている光の線が示していると思われる。このイエスと周囲の5人の関係は、すでに変容のひと時を映し出すだけではない。救いの歴史の中で、主イエス・キリストを頂点とするそれぞれのイエスとの関係が暗示されているようである。

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