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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)
2017年11月19日  年間第33主日 A年 (緑)
主を畏れる女こそ、たたえられる(箴言31・30より)


多くの動物のいる聖母子
版画 デューラー作 
ウィーン アルベルティーナ美術館 16世紀


 有名なデューラーの版画作品、大変豊かな自然の光景、動物などを背景にした聖母子の図である。
 デューラーはドイツ最大の画家、素描家、版画家とされる。年代的な位置づけを確認しておくと、1471年に生まれ、1528年に没す。レオナルド・ダ・ヴィンチ(生没年1452−1519)より年下で、ミケランジェロ(生没年1475−1564)とは同世代人。ニュルンベルクで金細工師の子として生まれ、早くから工芸や絵画の修行を始めた。ドイツでの技術習得のための遍歴(1490-94)、イタリア旅行(1494-95) を経て、1495年ニュルンベルクに帰郷、自身の工房を構えた。1498年に木版画連作『黙示録』『大受難伝』を発表し始め、名声を得る。第2次イタリア滞在(1505-1507) の間、有名な大作を手がけ,その後ドイツに戻り、『大受難伝』ともに『マリアの生涯』の木版連作を完成させている。1520年代にはルターによる宗教改革の波及の中、その精神に共感する『四人の使徒』(1526)という絵画を発表したことでも知られる。しかし、生涯、継続的に創作したのが黙示録、受難伝、マリアの生涯であったことは、デューラーのキリスト教芸術家としての立ち位置を物語るだろう。
 表紙作品は、聖母子を仰ぐ当時の信仰心を踏まえ、その背景を自由に想像したものである。自然や動物の描き方には自然主義的な描写精神がこめられ、当時の人々の自然な想像世界の中に聖母子の姿が溶け込んでいる。マリアに関する史実再現の意図はなく、自分たちの感性と意識の世界の中で聖母子への崇敬を表現している作品といえるが、それでもやはり、中世の写本画やステンドグラスのような、聖書の場面だけを永遠空間の出来事のようにイメージさせる作品伝統からすれば、やはり斬新である。
 さて、この版画作品をきょうの表紙作品に掲げたのは、第1朗読で読まれる箴言31章10-13 、19-20 、30-31 節が、「主を畏れる女」の姿を描き出していることにちなんでいる。箴言は、「主を畏れることは知恵の初め」(箴言9・10)という考え方から、さまざまな人生訓を語るもので、人生の知恵の根底には、神のみ前で自分の限界を悟り、主に対する礼拝心を根本において生きる姿勢があると説くものである。この女はそのような知恵に生きる者の形象となっており、自然の恵みから生活に役立つものをつくり出し(同31・13−14参照)、貧しい人々を迎え入れ、助ける(同31・20参照)。数行の描写の中にも、質素に人のために生きる姿が印象的である。
 ところで、福音朗読の箇所マタイ25章14−30節(長い場合。短い場合は25章14-15、19-21)でのいわゆる「タラントンの譬え」は、終末に向けて現在をどう生きるかを問いかけている。それぞれの力に応じて(マタイ25・15参照)与えられている才能(タレント=タラントンから来る言葉)を機敏に役立たせながら生きていくことを暗に勧めるこの話は、箴言の内容と照らし合わせると、主を畏れること、主の来臨を意識して備えることへの呼びかけという点で響き合う。どの時も主に向かう時として迎え入れ、たえずそこにあるもの、与えられているものをより豊かなものにしていく生き方こそ知恵ある生き方、神の知恵、神のことば、神のみ旨に応答していく生き方だということになる。
 第2朗読の一テサニロケ書5章1−6節の「主の日は来る」(5・2)ことを意識して、「目を覚まし、身を慎んでいましょう」(5・6)というメッセージもさらに連動している。「身を慎む」ということは消極的な姿勢ではなく、むしろ、目を覚ましていて、主を待ち、すべてのよい機会を神のために生かしていくという態度を語るものだろう。
 主を迎えるための知恵ある生き方という全体を貫くメッセージは、マリアの姿とも重なってくる。神のみ旨のすべてを受け入れ、あらゆる配慮を尽くして御子の誕生のために仕え、自らを人間としての御子の成長のために差し出しているからである。まさに神の知恵はマリアに宿り、マリアをとおして輝いたのである。箴言の女性の姿はマリアの中に見ることがふさわしい。年間の主日も終わりに近く、きょうの聖書朗読のテーマはすでに待降節の始まりを準備する。豊かな自然に溶け込んでいるマリアとイエスの姿は、すでに降誕節の予告である。

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