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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)
2017年12月03日  待降節第1主日 B年 (紫)
気をつけて、目を覚ましていなさい (マルコ13・33より)


キリスト 
モザイク 
イタリア トルチェッロ司教座聖堂   12世紀


 イコンのキリスト像とよく似た構成の作品だが、全体として頭と光輪の大きさが印象づけられる。そして大きく見開かれた目、つぐんだ口が示す意志の強さが、主としての威厳をさらに高めている。視線は見ているものに真っ向から向かうというより、やや左遠方を見つめている感じがまた面白い。
 待降節B年の福音朗読箇所は、マルコ13章33−37節。「気をつけて、目を覚ましていなさい」(33節)から始まり、「あなたがたに言うことは、すべての人に言うのだ。目を覚ましていなさい」(37節)で結ばれる箇所。ここに待降節の意味が凝縮されているといわれる。イエスが受難に向かう前に弟子たちに言った言葉は、ただそのときだけのことばではない。37節のことばになぞらえていえば、「今言うことは、いつも言うことだ」ということになる。実際、 「目を覚ましていない」と、主の来臨がいつくるかわからない、そのときにいつも備えているようにという意味で語られているとしたら、それは、今もいつもミサを通してキリストが語りかけていることばだと受け止めることが大切だろう。
 その意味で、全能永遠の主としてのキリストを描くイコンに似たこのモザイクは、今、味わうにふさわしい画像だといえるのではないだろうか。
 福音書は、いつもイエスの生涯の歩みの中で、イエスの口に、その永遠のいのちのことば(ヨハネ6・68参照)を語らせている。ただ限られた状況で語られた一過性のセリフではないからこそ、イエスのことばが伝えられ、それが語られた状況についての記憶や伝承と組み合わされて生涯の叙述が形づくられているのである。しかし、イエスのことばのもつ力は、そのときだけのものではない。すべてのイエスのことばは、永遠の主として、神の民に向かって、その集いにおいて告げられている。ミサの福音朗読とは、そういうものであろう。ただ昔に起こったことを描写してなぞっているのではない。いつもイエスは、今、語りかけているのだという典礼での朗読の意味を考えるために、表紙のようなキリスト像をいつも福音朗読とともに思い浮かべておくのがふさわしいだろう。
「目を覚ましている」とはもちろん警句である。実際に、我々は寝起きしなくては生きていけないのだから。心の目覚めをいつも言っている。人は独りきりになるのではなく、いつも主に向かって開かれていなくてはならない。人は神とのかかわりの中ですでに生きている。キリスト者とは、そのことを、イエスを通じて自覚することができた人間である。そうであるならば、ますます心の目覚めが求められている。そのことが毎年やってくるアドヴェントゥス(待降節)の意味になる。ほんとうは、アドヴェントゥスとは来臨を意味するので「主の来臨節」とでも言ったほうが正確になる。来るかこないか待ちぼうけをする季節ではなく、必ずやって来ることを信じて、それに備える季節だからである。降誕を待つ我々の季節ではなく、あくまでやってくることを約束している主の季節である。そのことを何よりも、キリスト像を仰ぐことで考えてみてはどうだろうか。
 第1朗読はまさに、主である神、父である神、贖い主である神(イザヤ63・16参照)への告白であり、来てください(63・19b参照)と嘆願する心の吐露である。告白も嘆願も、信頼をもってひとえに神に向かう心そのものである。第2朗読の使徒書朗読は1コリント書1章3−9節。使徒書朗読は、準継続朗読であった年間から変わり、待降節からは主題選択朗読として待降節全体、そして各主日のテーマを考慮して配分されている。きょうの1コリント書の箇所は、ミサとのつながりが明らかである。「わたしたちの父である神と主イエス・キリストからの恵みと平和が、あなたがたにあるように」(3節)は、ミサの冒頭の挨拶のもとになっている文言の一つである。ミサに集うわたしたちへのメッセージとして、使徒のことばは、キリスト者とはどのような存在であるかを雄弁に語る。「神の子、わたしたちの主イエス・キリストとの交わりに招き入れられた」(9節)者として、「わたしたちの主イエス・キリストの現れを待ち望んで」(7節)いる者にほかならない。何度もキリストの名が繰り返されるこの箇所に、このキリスト像はふさわしい。


参考書籍のご紹介:和田幹男著『主日の聖書を読む(B年)――典礼暦に沿って』

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