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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)
2018年7月15日  年間第15主日 B年 (緑)
〔イエスは〕十二人を呼び寄せ、二人ずつ組にして遣わすことにされた(マルコ6・7より)


イエスと十二使徒(部分、上:拡大図)
挿絵 ギリシア語聖書写本
パリ国立図書館  11世紀

 イエスを先頭にして、きれいに十二使徒が並んで行列している。なだらかな山に昇っていく形になっているので、直接の典拠はマルコ福音書 3章13−15節といえるかもしれない。「イエスが山に登って、これと思う人々を呼び寄せられると、彼らはそばに集まって来た。そこで、十二人を任命し、使徒と名付けられた。彼らを自分のそばに置くため、また、派遣して宣教させ、悪霊を追い出す権能を持たせるためであった」(並行マタイ10・1−4 、ルカ 6・12−16)。この文章に基づくと、「使徒」とは、イエスに呼び寄せられ、そばに集められた人であること、同時に派遣されて、宣教と悪霊追放を行う使命を与えられる人ということになる。「使徒」(アポストロス)は文字通り、「アポステッロー」(遣わす)というギリシア語からくる単語なので、イエスによって遣わされる人を意味する名詞だが、それではこのマルコの箇所で述べられていることの半面だけしか表現されていないことがわかる。つまりイエスに呼び寄せられ、側に集められているということが使徒の本質であることが、マルコのきわめて簡潔な表現の中には明記されているのである(マタイやルカよりマルコの叙述のほうが詳しい)。
 さて、きょうの福音朗読箇所はマルコ6章7−13節である。ここは、3章13-15節で任命された十二人を「呼び寄せ、二人ずつ組にして遣わすことにされた」(6・7)とあるように、ここでもやはり呼び寄せ、派遣するというイエスの命令的行為を記す。そしてきわめて具体的な宣教活動への指示が述べられる。その内容は、今日の宣教派遣のイメージとは異なる。なにも持たず身一つでいくこと、それについてどう教えるかという教え方を問題にするのではなく、使徒たちを受け入れ、話に耳を傾け、宿泊させてくれるか、あるいは、一切、耳を傾けようともしないところは決別するようにとの指示である(6・7−11全体)。このような宣教師の活動は、現在では想像しにくいが、キリシタン時代、明治初期の開拓宣教の時代には似たようなことが実際に行われていたであろう。現代でいえば、着のみ着のまま難民のように新しい社会の中に入っていくようなイメージに近いかもしれない。いずれにしても、命懸けの派遣の旅であることは伝わってくる。
 これを本当に実行するための指示とするか、イエスによる宣教派遣の理念を含ませているものとして取るかは、その時代時代で、受けとめ方は違うようになるのかもしれない。
 ここで、注目したいのは、このような使徒たちの本質的なあり方は、すべてのキリスト者に通じる、イエスに呼び寄せられ、そばに集められ、そして、遣わされて宣教し、悪霊を追放するという姿である。この「呼び寄せられて集められ、遣わされる」というイエスとの関係は、ミサがまさしく体現しているものでもある。主によって呼び集められた民であることは、ミサの集いに参加することで表され、福音を聞き、主の食卓で交わりをし、そして派遣されていく。そこでは、イエスと使徒たちの関係がすべてのキリスト者において展開され、各共同体で現在化される。使徒というと、まずは教皇、次には司教団そして司祭団、助祭たちのことを思うかもしれないが、現代の教会は、まず神の民全体がこのように主のもとに呼び集められて、また派遣されるというダイナミズムの中で存在している。
 十二使徒の十二という数自体も象徴的で、イスラエルの十二部族を示しているとすれば、十二使徒は、まぎれもなく、新しい神の民、新約の神の民を象徴しているものと見ることができる。このようなことを考えておくと、実は第2朗読箇所のエフェソ書(1・3−14、または1・3−10)の内容を読み取る前提になる。そこでは、父である神と、主イエス・キリスト、そして「わたしたち」(キリスト者、教会)の関係が、救いの歴史全体を展望しながら語られ、この救いの歴史におけるキリスト者の使命がうたわれているからである。このエフェソ書的な宇宙論的全体観をもって、きょうの表紙絵を見ると、このイエスに導かれる十二使徒たちがまさしく我々の姿を映し出しているものと見ることもできる。ミサはまさしく、この使徒たちの歩みに連なるものとして、今、我々の中で、続けられている。「時が満ちるに及んで、救いの業(わざ)が完成され」(エフェソ1・10)るときまで。

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