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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)
2018年11月04日  年間第31主日 B年 (緑)
あなたの神である主を愛しなさい。隣人を愛しなさい (福音朗読主題句 マルコ12・30、31より)

祝福するキリスト 
ラヴェンナ 
サンタポリナーレ・イン・クラッセ教会 6世紀

 全能の主キリストを仰ぐモザイク−−これは、イタリア、ラヴェンナのサンタポリナーレ・イン・クラッセ教会の聖堂内の壁にある。このキリストの肖像を中央にして、その両側に4福音記者のシンボルが描かれている。すなわちライオン(マルコ)、雄牛(ルカ)が(向かって右側)、人(マタイ)、鷲(ヨハネ)が左側にいる。4福音書によってあかしされたイエス・キリストの教えと生涯の全体が、この像に凝縮されているのだろう。
 キリストは、イコンに見られるのと同様な姿で、左手に聖書を抱え、右手は祝福のしぐさをしている。清明なまなざしでしっかりと正面を見つめている。このようなキリストの姿とともに、きょうの福音朗読箇所(マルコ12・28b-34)における神への愛、隣人への愛の教えを味わってみよう。それは、一人の律法学者が最も重要な掟をイエスに尋ね求めたときのイエスの表情として味わえるのではないだろうか。イエスの答えを素直に受け入れた律法学者に対して、イエスは「あなたは、神の国から遠くない」(12・34)と言う。その律法学者に、いわば神の国は近くにあると言っているそのイエス(34節)、すなわち神の国の輝きを体現しているイエスの姿をここに味わってもよい。
 この箇所は、いろいろな意味で興味深い。しばしばイエスは律法学者を批判することが多いのに、ここでは、適切な答えをしたということで、その律法学者を「神の国から遠くない」と、祝福し褒めている。ここには、イエスの弟子になった人の受け入れのプロセスが示されているように思われる。
 それ以上に、重要なのは、キリスト教の特徴となる大切な二つの愛の掟が旧約の律法(モーセの律法と考えられる)の引用確認として告げられていることである。第一の掟は「イスラエルよ、聞け、わたしたちの神である主は、唯一の主である。心を尽くし、精神を尽くし、思いを尽くし、力を尽くして、あなたの神である主を愛しなさい」(29-30節)。これは申命記6 章4-5節、きょうの第一朗読箇所(6・2-6)に含まれているところである。そして第二の掟は、「隣人を自分のように愛しなさい」(31節)。レビ記19章18節である。「愛しなさい」が共通するこの二つの箇所を最も重要な掟として取り上げたという卓越した律法解釈をイエスが示したことが耳目を奪う。すでに律法の中に大切な掟は語られていたというところがユニークである。このことを印象深く伝える、マルコをはじめとする共観福音書(並行箇所マタイ22・34−40;ルカ10・25−28)の役割は大きい。ヨハネ福音書において愛の掟は、「わたしがあなたがたを愛したように、あなたがたも互いに愛しあいなさい」(ヨハネ13・34;15・12も参照)となり、イエスと我々との関係として愛が語られる。このことももちろん重要だが、同時に、この愛の掟は最初から律法の中にあり、その根底にあるということを共観福音書から知ることも重要である。長い救済史の頂点としてイエスとその教えがあるという展望に立つことができるのである。パウロが「愛は律法を全うする」(ローマ13・10)と言う根拠もそこにある。
 モーセを通して授けられた十戒も、出エジプト記20章3 −17節を見ると、最初は神に向かう態度についての掟(ほかに神があってはならない。主の名をみだりに唱えてはならない。安息日を心に留め、聖別すること)があり、続いて、人に対する態度についての掟(父母を敬え。殺してはならない。姦淫してはならない。盗んではならない、隣人に関して偽証してはならない。隣人の家など隣人のものを欲してはならない)が来る。禁止命令的な言い方が多くても、これらは究極的には、主である神を愛すること、隣人を愛することの両方の面での愛を教えていると理解することができる。ここにある根本精神が、イエスの教えを通じて二方向の愛の掟として集約されているといえる。
 それは、もとより、イエスが神の御子であり、御父のみ旨を体現する方だからである。御子としてのキリストのみ顔には、御父である神の姿も同時に仰ぐことができる。このモザイクやイコンのキリスト像は、そのような味わいをどこまでも深くたたえている。

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