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2018年年頭言

現代における家族をめぐって
            オリエンス宗教研究所所長 コンスタンチノ・コンニ・カランバ

 新年のお慶びを申し上げます。日本と世界の人々に、主イエスのもたらされた喜び・愛・平和が訪れることを心よりお祈りいたします。
 この時期に家族そろって、または友人・知人とご一緒に楽しい時間を過ごそうとしている方はたくさんいらっしゃることでしょう。このような素晴らしい習慣を大切にしたいと願うのは私だけでしょうか。ここで社会の基礎であり、一つの重要な社会制度でもある家族を取り巻く諸問題へのしかるべき認識と、その対策の緊急性を訴えたいと思います。
 私自身はキリスト教の家庭に生まれ育ち、しかも平凡な大家族の温かさに囲まれて歩んできたため、当たり前のように家族の大切さをずっと感じています。幼い頃は中庭で兄弟や近所の子どもらと飛んだり跳ねたりして遊びながら成長してきました。
 しかし時代の流れで家族観も変化し、またその結果、数え切れない問題が生じています。昨今の緊急課題として、離婚・一人親家庭・孤独・虐待・少子高齢化と独身世帯の増加などが挙げられます。ではそれを、そのまま放っておいて良いのでしょうか。それともどうしようもないかのように考え、自然の成り行きに任せれば良いのでしょうか。
 深刻な危機に直面している現代の家族を見ながら、何もしないわけにはいきません。なぜなら人間社会の安定と将来がかかっているばかりか、さもないと全体の活力を失うことにつながりかねないからです。それは、聖ヨハネ・パウロ二世教皇が「社会の幸福と善が家庭の幸福と密接に結ばれている」(使徒的勧告『家族――愛といのちのきずな』3)と述べた通りです。
 新年を迎えた私たちには、現代家族を取り巻く価値観の多様化と、時代変化への適切な対応が求められています。社会の中で仕事と家庭のバランスを保たせる制度を作り直すことはもちろん重要ですが、今こそ、家族の存在のありがたさや重要性をもう一度再発見していただきたいのです。
 家庭生活を後回しにして、いつも経済活動優先・仕事優先・行き過ぎた個人主義など、さまざまな強迫観念に取りつかれて、最悪の場合は過労死にまで追い込まれてしまうことは断じて避けなければなりません。また、「家族を持つ」のは面倒くさい・しんどい・金がかかる……といった理由で、自己中心的な幸せのためばかりに目がいくと、結局は社会全体が困ることになるでしょう。同教皇が「人間の価値は富ではなく、その人の人間性である」(同37、『現代世界憲章』35参照)と述べる通りです。
 確かに、健全な家庭・家族を築くためには、相応の努力とある程度の富が欠かせません。しかし物質的な豊かさだけを追求し過ぎると、結果として家族への関心が薄れてしまいます。聖家族も苦労(貧困・避難生活・無理解など)を体験したわけですが、互いに支え合いながら、謙虚に全てを神に委ね、労苦を克服して神の愛に満ちた平和な家庭を築くことができました。実に多くの労苦を背負ったが故に、幸せを感じることができるという見方もあるでしょう。
 変動する社会の中においても、家族を何より大事にしたいと思う方がまだ多数を占めています。幸せな家庭を築き上げることが、最も大切な人間の使命であり、社会への責任となり、そして家族は「恵み」だという意識を高めていきたいと思います。その意味で家族を脅かす動きを退け、反対の声を上げなければなりません。
 そして同時に、孤立している方、家庭環境に恵まれていない方、さまざまな困難の中にある家族のことなどをも忘れてはいけません。個々バラバラになっている社会ではなく、血の繋がりとしての結び付き以上に、人間共同体の中にある個々の絆を大切にしたいと願うのです。
 今年も希望をもって、社会の基盤である「家族」の大切さに関心を寄せ、さらに血縁を超えた幸せな共同体・神の家族を目指して歩んでまいりましょう。


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