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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長 石井祥裕)
2023年5月7日 復活節第5主日 A年 (白)  
わたしは道であり、真理であり、命である (ヨハネ14・6より)

四福音書の象徴に囲まれる荘厳のキリスト
浮彫 
フランス シャルトル大聖堂 12世紀

 復活節第5主日と第6主日の朗読配分は、ABC年各年にわたり、ヨハネ13章、14章、15章から取られている。最後の晩餐の席での話から始まる、イエスの弟子たちに対するいわば告別説教と呼ばれる一連の説教の箇所である。復活節にあたって、新入信者を迎えた信仰共同体が、あらためてイエスの教えを受けとめるという意味の配分である。A年のきょうの箇所はヨハネ14章1-12節。イエスはまず昇天と再臨の約束(1-3節)を告げ、「わたしがどこへ行くのか、その道をあなたがたは知っている」(4節)と謎かけのようなことばで結ぶ。さっそくトマスが「どうしてその道を知ることができるでしょうか」(5節)と尋ねる。それに対する答えが「わたしは道であり、真理であり、命である」(6節)である。そして、それに続くことばは、御父と御子の一致、御子であるイエスを信じることへの呼びかけをめぐって展開される。
 「わたしは道であり、真理であり、命である」――このことば、イエス自身のあり方、我々にとっての主イエス・キリストのあり方、その神秘を端的に自ら説き明かしている命題として、心に刻まれる。ここで、とても興味深く思われるのは、先週(復活節第4主日A年)の福音朗読箇所(ヨハネ10・1-10)では、「わたしは羊の門である」(ヨハネ10・7)が鍵となることばだったのに対して、きょうの箇所では、「わたしは道であり、真理であり、命である」が中心的なメッセージとなっている。このように、福音書にはしばしば、イエスの「わたしは……である」という文言が決定的な力をもって登場する。ヨハネ福音書はその典型である。羊の門や羊飼いに関することばはもちろん、そのほかに、「わたしは命のパンである」(ヨハネ6・48)、「わたしは、天から降って来た生きたパンである」(6・51)、「わたしは世の光である」(8・12)、「わたしは、ぶどうの木、あなたがたはその枝である」(15・5)などがある。これに準ずるのは、「わたしの○○は……である」という形式の文言である。「わたしの肉はまことの食べ物、わたしの血はまことの飲み物だからである」(6・55)など。
 このようなことばで、まっすぐに我々に向かってくる。このことばに対して、おのずとそれを受け入れ信じるのかどうかなのか、という決断に迫られる思いになる。我々をゆるがす、イエスの自己啓示のことばである。
 このことばをイメージするために、シャルトル大聖堂の壁面の浮彫りに描かれる荘厳のキリスト像を仰いでみたい。神の栄光(光背が象徴)を表す玉座のキリストの姿が中心にある。その左右に描かれている四体の像は、四福音書の象徴である。(向かって)左上 人の姿(天使)はマタイ、右上は鷲=ヨハネの象徴、左下=ライオン=マルコの象徴、右下=牛=ルカである。下に描かれる人々のうち3人ずつ4組になっている12人は十二使徒と理解してもよいだろう。円弧を描きながらキリストを輪囲むように描かれているのは、聖人たちに違いない。このように、ここには、キリストとキリストを告げ知らせる使徒や福音記者たち、そしてキリストとともに生涯を歩んだ聖人たちなど、キリストを「道・真理・いのち」として信じ、従った人々の姿である。これは、神の民の象徴としていってもよい。
 このような、きょうの福音、そして表紙作品に示されるキリスト像を、我々としては、ミサの体験の中に落とし込んでいくことが大切である。道であり、真理であり、いのちであるキリストを信じ、そのキリストがともにいることを確認し合い(主は皆さんとともに)、信仰宣言をし、賛美をしていく。とりわけ、この荘厳のキリスト像に対しては、「栄光の賛歌」の賛美がふさわしい。「ただひとり聖なる方、すべてを越える唯一の主、イエス・キリストよ、聖霊とともに父なる神の栄光のうちに。アーメン」。そして、やはり、拝領前の信仰告白として、日本の教会が独自に選んできたことば「主よ、あなたは神の子キリスト、永遠のいのちの糧、あなたをおいてだれのところに行きましょう」がやはり「わたしは道であり、真理であり、命である」というイエスのことばに、はっきりと応えることばになっているように思われてならない。このことばが拝領前の告白として唱えられるときには、大切に、きょうのイエスのことばを思い起こすことにしたい。

 きょうの福音箇所をさらに深めるために

和田幹男 著『主日の聖書を読む(A年)●典礼暦に沿って』「復活節第五主日」

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