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聖書と典礼

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『聖書と典礼』表紙絵解説 (『聖書と典礼』編集長・日本カトリック神学院教授 石井祥裕)
2026年10月18日 年間第29主日 A年 (緑)
皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい  (マタイ22・21より)

全能者キリスト 
イコン  
ギリシア アトス ヒランダリ修道院 13世紀後半

 きょうの福音朗読箇所マタイ22章15-21節では、有名な「皇帝のものは皇帝に、神のものは神に返しなさい」(21節)というイエスの言葉が告げられる。この箇所で、ファリサイ派の弟子たちからイエスに差し向けられた問いは、「皇帝に税金を納めるのは、律法に適っているでしょうか」というものだった(17節)。この問いかけが、イエスの言葉尻をとらえて罠にかけるためのものであったことは最初に述べられているとおりである(15節)。そのため、ここの場面が納税論争と呼ばれるのだが、イエスの答えは質問者の意図をはるかに超えた意味を含んでおり、その言葉もさまざまに解釈されている。
 聖書のことばを絵やイコンとともに味わうという、このコーナーにとって、とても示唆的な解釈がある。それは、イエスが、皇帝の像と銘が刻まれるデナリオン銀貨を指して「これは、だれの肖像と銘か」(20節)と逆に問いかけたときの「肖像」という言葉に注目する見方である。この言葉はギリシア語エイコーンの訳語で、ほかに「像・かたどり・似姿」などとも訳せる。神が人をご自分にかたどって創造した(創世記1・26-27 参照)というところから、人間は神の像であるといわれるときにもこの言葉が使われている。したがって、ここは、皇帝の像が刻まれているものは皇帝に返しなさい、そして「神のものは神に」(21節)、すなわち、神のかたどり、神の像として創造されたあなたがた自身はあくまで神に属するものなので、自分自身を神に返しなさいというメッセージが含まれていると解釈するものである。皇帝への納税が律法に適っているかどうかという問題を超えて、聞く人々を神の前に立たせる、きっぱりとした力あることばであることはまちがいない。
 ギリシア語エイコーンは、二コリント書では次のような箇所で使われている。「わたしたちは皆、顔の覆いを除かれて、鏡のように主の栄光を映し出しながら、栄光から栄光へと、主と同じ姿(エイコーン)に造りかえられていきます。これは主の霊の働きによることです」(二コリント3・18)。何よりもイエス・キリストこそ神の姿、神を表された方であることが前提とされている。その上で、そのキリストの姿と同じ姿に変えられていくのがキリスト者の生き方だと諭される。このような関連性を考えるために、表紙絵ではキリストのイコンを表紙絵に掲げられ、黙想の糸口とされている。
 このイコンを味わうために第一朗読箇所からイザヤ45章5 、6 節を味わってみよう。「わたしが主、ほかにはいない」(5、6節)で二度繰り返されるこの文章の中では、だれが主であるのか、だれが神であるのか、という問いかけがこちらに鋭く迫ってくる。キリストこそ……と我々は言うべきものである。また、福音朗読箇所の中のイエスのことばは、皇帝の肖像のある銀貨を前に、我々は何のために生きているのか、何に仕えて生きていくのか、どう行動していくべきなのか、と、大変、現実的な問題を提起してくる。
 そして、究極的には、万物を造り、それらを導いている神への眼差しを我々に呼び起こし、間接的に、あなたがたはその神のものであると訴えかけている。イザヤの預言では、「日の昇るところから日の沈むところまで、人々は知るようになる、わたしのほかは、むなしいものだ、と。わたしが主、ほかにはいない」(イザヤ45・6)と告げられ、神の普遍性、唯一性が強調されている。そのことを踏まえて考えてみると、きょうの福音の「神のものは神に返しなさい」(21節)のもつ意味の大きさがいっそう明らかになる。我々の神は普遍的な神である。我々一部のものが信じているだけのものではなく、神のことを知らずに、神に心を向けることがなくても生きているすべての人にとっての神である。その神のことをキリストによって知らされたと信じる者には、ひたすら、その神に仕えることが求められる。それは、同じ唯一の神によって生きているすべての人に、神のことを気づかせるという使命のためである。ここに、まさしく宣教の根拠がある。
 銀貨の肖像はあくまで一つのきっかけに過ぎず、イエスの問いかけは、我々の内心の奥深くに迫り、神との関わりを省みさせる。回心へと推し進める力のこもる「神のものは神に返しなさい」(21節)のことばである。全能者キリストのイコンは、そう問いかけるイエス自身の姿の中に、主である神を仰がせてくれる。それは、感謝の祭儀においていつもともにおられる主キリストの像でもある。
 きょうの福音箇所をさらに深めるために

和田幹男 著『主日の聖書を読む(A年)●典礼暦に沿って』年間第29主日

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